東京高等裁判所 昭和31年(ラ)112号 決定
抗告人提出の陳述書並びに本件抵当権設定金円借用証書、本件建物登記簿謄本の各記載によれば、相手方は昭和二十九年二月二十三日本件建物に抵当権を設定して抗告人に対し金二十五万円を弁済期同年五月二十二日、利息月七分毎月二十八日払、期限後の損害金日歩三十銭と定めて貸与し、即時、抗告人から弁済期まで三箇月分の利息金五万二千五百円の前払を受けたが、ただ抵当権設定登記の関係上、表向きは利息を年一割と定めた如き形をとつたことが認められる。然しながら、他に特段の事実の認むべきもののない本件においては、右利息並びに損害金の約定、利息の天引の事実があるからといつて、現下の経済情勢下においてはこれによつて直ちに本件消費貸借契約自体が公序良俗に反するものとして無効となるものとはいえない。従つて本件消費貸借契約自体が無効であることを前提とする抗告人の主張は採用し難い。
尤も記録上本件が抗告人のために商事債務である等特段の事実の認められない本件においては、前記利息並びに損害金の定めは一応旧利息制限法に違反するものと断ぜざるを得ないから、抗告人は相手方に対し同法の許容する範囲内における債務を負担するに過ぎないともいえるが、抵当権の実行に基く競売事件においては、債務が一部でも残存し、債務者が遅滞にあるときは、債権者は有効にその競売手続を進行せしめ得るのであつて、抗告人は本件消費貸借契約における弁済期が前記のとおり昭和二十九年五月二十二日であることを自認しており、又同年十一月以降の損害金を支払つたとの主張をしないところであるし、記録によつても抗告人は本件債務につき遅滞にあるものといえるから、相手方は本件抵当権に基き本件貸金元金(抗告人の主張するところによつても少くとも金十九万七千五百円は残存する。)並びに昭和二十九年十一月一日以降の損害金(同年十月末日までの分は支払済)の支払を受けるため、本件競売手続を有効に進め得べきものといわなければならないとして本件抗告を棄却した。